アナレンマ図を『ステラナビゲータ』で描く
【取材ノート】
- 記者:
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樋口先生、本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。
日本天文考古学会誌に掲載された「アナレンマを『ステラナビゲータ』で描く」は、
天文考古学に新たな視点をもたらす大変興味深い記事でした。
本日はその内容について、詳しくお話を伺えればと思います。
- 樋口:
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こちらこそ、よろしくお願いします。
この研究が天文考古学の発展に少しでも貢献できればと思います。
でも「先生」は勘弁して下さい。普通にお願いします。
美濃白川のお茶でも飲みながら、飛騨の「とちの実煎餅」です。
- 記者:
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いただきます!先生。zzz…ポリポリ。
つぶつぶとした食感と香ばしいさが、ほんのりとした甘みの「白川茶」とマリアージュです。
- 記者:
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それで先生、ゴクッ、天文考古学とは何ですか?。
- 樋口:
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簡単に言うと、古代人が、星を見て何を考えていたのか。
太陽の動きと季節の移り変わりから暦を考えていたのか、など昔のことを
現代の天文学の知識から考古学を理解しようとする学問です。
- 記者:
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では、記事の主題である「アナレンマ図」についてお聞かせください。
一般の方にはあまり馴染みのない言葉かと思いますが、どのようなものなのでしょうか?
- 樋口:
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はい。「アナレンマ」とは、1年間毎日同じ時刻に太陽の位置を観測し、その軌跡を結んで得られる、
ちょうど数字の「8」のような形をした曲線図形のことです。
地球の公転運動や
自転軸の傾きが
組み合わさることで、このユニークな形が生まれます。
そして、「アナレンマ図」とは、このアナレンマを複数描き、周囲の地形や風景と組み合わせることで、
1年間の太陽の動きを視覚的に捉えることができる図のことです。
- 記者:
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なるほど。そのアナレンマ図が、なぜ天文考古学において重要なのでしょうか?
- 樋口:
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古代の人々は、農耕や祭祀のために太陽の動きを正確に把握していました。
ストーンヘンジや
金山巨石群のような
古代遺跡や巨石配置は、太陽の
分点や至点などを観測するために使われていたと考えられています。
アナレンマ図は、古代人が太陽を観測し、日の出や日の入りの方角から1年間の太陽の動きをどのように捉え、
暦と関連付けていたのかを解明する強力な手がかりとなります。
例えば、遺跡の巨石が指し示す方向とアナレンマ図上の特定の点が一致すれば、その巨石が太陽の動きと関連していた可能性が高まります。
- 記者:
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今回の記事では、天文シミュレーションソフト『ステラナビゲータ』を使ってアナレンマ図を作成する方法を公開されていますが、
このソフトの導入はどのようなメリットがあるのでしょうか?
- 樋口:
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『ステラナビゲータ』は、高精度な天体計算ができる優れたソフトです。
これを用いることで、誰でも簡単に、かつ正確にアナレンマ図を作成できるようになります。
これまでは専門的な知識やツールが必要だった作業が、より手軽に行えるようになるため、
研究の裾野を広げ、新たな発見に繋がる可能性を秘めていると考えています。
- 記者:
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記事の中では、アナレンマが「8の字」になる理由や、その形状が変化するメカニズムについても詳しく解説されていますね。
特に、歳差運動によるアナレンマの形状変化は非常に興味深い内容でした。
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【学会誌〜図1】正午のアナレンマに二十四節気の位置をプロットした図。(クリック拡大)
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- 樋口:
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そうですね。アナレンマの8の字は、地球の公転軌道が楕円であることによる
均時差と、
地軸の傾きによる季節変化が組み合わさって生じます。
さらに、歳差運動によって
地軸の傾きが変化するため、何千年も遡るとアナレンマの形は現在とは異なり、
例えば1万2,000年前には8の字が逆転していたことも分かります。
これは、古代の人々が観測していた太陽の動きが、現代とは少し違っていた可能性を示唆しています。
- 記者:
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多神社から見たアナレンマ図の例も示されていて、非常に分かりやすかったです。
具体的な遺跡と結びつけることで、アナレンマ図の有用性がより明確になりますね。
- 樋口:
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はい。多神社
は、北緯34度32分という「太陽の道」
と呼ばれる東西の線上に位置し、古代の重要な遺跡や神社が点在する場所です。
ここから東を見ると三輪山があり、春分・秋分の日に太陽が三輪山から昇る様子をアナレンマ図で視覚的に確認できます。
このように、特定の場所から見た太陽の動きを再現することで、古代の人々が何を観測し、何を暦の基準にしていたのかをより深く考察できるのです。
- 記者:
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記事の最後には、アナレンマ図のさらなる進化として、『カシミール3D』との連携や「ステラトーク」によるプログラム化についても触れられています。
これからの研究は、どのような方向へ進んでいくのでしょうか?
- 樋口:
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『カシミール3D』との連携は、地形データの精度を上げることで、よりリアルなアナレンマ図を作成することを可能にします。
また、『ステラナビゲータ』のスクリプト言語である「ステラトーク」を使えば、
描画作業の自動化や、より多様な条件でのシミュレーションが可能になります。
将来的には、これらの技術を活用し、日本各地の古代遺跡において、より高精度で詳細なアナレンマ図を作成し、
古代の天文観測の痕跡をより具体的に解明していきたいと考えています。
- 記者:
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長年の試行錯誤の末に、今回の研究成果を発表されたとのこと。
樋口先生にとって、この研究の原点や、今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか?
- 樋口:
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きっかけは、インターネットでアナレンマの写真を見たことでした。
縄文時代の巨石遺跡が、太陽の動きを観測する古代の天文台として機能していたのではないか、
その検証にアナレンマ図が役立つのではないか、という思いから試行錯誤を始めました。
このアナレンマ図が、古代の人々の生活と太陽の関係を解き明かし、
天文考古学の研究に欠かせないツールとして広く活用されることを願っています。
そして、いつかこの研究が、まだ見ぬ古代の謎を解き明かす一助となれば、これほど嬉しいことはありません。
- 記者:
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樋口先生、本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。
先生の研究が、今後の天文考古学の発展に大きく貢献されることを期待しております。
- 樋口:
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こちらこそ、ありがとうございました。
【記事】
古代の“太陽カレンダー”をPCで再現! 遺跡の謎解きに新手法
天文ソフト活用、「アナレンマ図」で太陽1年の動きを可視化
古代の人々が生活の指針とした太陽の動き。その1年間の軌跡をパソコン上で正確に描き出し、遺跡の謎を解き明かす画期的な手法を、
名古屋市在住の樋口元康氏(日本天文考古学会理事)が考案した。
人気の天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」を活用した「アナレンマ図」の作成方法をこのほど
日本天文考古学会の学会誌で公開。考古学ファンや天文愛好家の間で注目を集めている。
ストーンヘンジや
日本の金山巨石群など、世界中の古代遺跡の多くは、太陽の動きを観測し、季節を知るための「天文台」だったと考えられている。
どの石が、いつの太陽を指し示しているのか。その謎を解く強力なツールが、樋口氏が提唱する「アナレンマ図(Analemma Diagram)」だ。
アナレンマ(Analemma)とは、1年を通じて毎日同じ時刻に太陽の位置を記録すると描かれる「8の字」の曲線。
地球の公転軌道が楕円であることや、自転軸が傾いていることによって生じる。
アナレンマ図は、この8の字の曲線を複数描き、日の出から日の入りまでの太陽の通り道や、
周囲の山々といった風景を重ね合わせたものだ。
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【学会誌〜図4】日の出のアナレンマ図。毎正時のアナレンマに二至二分の日周運動と地形風景を重ねた図。学会誌に設定と手順を公開している。
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「この図を使えば、特定の日、特定の時刻に、太陽がどの方角の、どの山の稜線から昇るのかが一目瞭然になります」と樋口氏は語る。
例えば、遺跡にある巨石の向きと、アナレンマ図に描かれた夏至の日の出の位置がぴったり一致すれば、
その石が暦を知るための重要な目印だった可能性が極めて高まるという。
掲載の説明では、天文ソフト「ステラナビゲータ」(アストロアーツ社)
を使ったアナレンマ図の具体的な作成手順を、設定方法を交えて詳細に解説。
誰でもパソコン上で、好きな場所、好きな時代の太陽の動きをシミュレーションできる道筋を示した。
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【学会誌〜図2】歳差運動によるアナレンマの形の変化。
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縄文時代は「秋の日はつるべ落とし」ではなかった?
アナレンマの形は、数千年という長い年月をかけて変化することも、この手法の興味深い点だ。
地球の歳差運動などにより、地軸の傾きや公転軌道が少しずつ変わるためだ。
シミュレーションによると、今から1万2000年前の縄文時代草創期のアナレンマは、現在の8の字とは上下が逆転していたという。
「現代では、日が急に短くなる秋を『つるべ落とし』と表現しますが、縄文時代は逆に春の方が日の出の間隔が大きく、
季節の進みが早く感じられたかもしれません。古代人の季節感も今とは違っていた可能性があるのです」と樋口氏は指摘する。
三輪山から昇る太陽を“追体験”
樋口氏は、この手法の応用例として、奈良盆地の多(おお)神社
から見たアナレンマ図を公開している。
東に遙拝する三輪山は
古くから信仰の対象だが、図を見ると、春分・秋分の日には、その三輪山の南側の山腹から太陽が昇ることが正確に読み取れる。
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【学会誌〜図6】カシミール3Dとステラトークを使って、多神社から見た日の出のアナレンマ図。(クリック拡大)春分・秋分の日の三輪山の日の出に注目。
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さらに、地形データをより高精細なものに差し替えたり、
専用プログラム(ステラトーク)で描画を自動化したりすることで、
プロの研究にも耐えうる高精度な検証が可能になるという。
樋口氏は、「かつてインターネットで見た1枚のアナレンマ写真が、この研究のきっかけでした。
試行錯誤の末、古代人が見ていたであろう空を誰もが手軽に再現できる方法を確立できました。
このアナレンマ図が、日本各地の遺跡の謎を解明する一助となることを願っています」と、今後の広がりへの期待を語った。
( 生成AI & 樋口元康 )